養子縁組は相続税対策になるの?
相続税対策で養子縁組は有効と聞いたことがあるけれど・・・、メリットとデメリットや注意点は?疑問に思われている方も多いと思います。今回は、養子縁組の効果と注意点を解説致します!
■養子縁組とは
養子縁組とは、血の繋がりのない養親と養子との間に法律上の親子関係を作り出す制度です。
養子縁組には、
- 縁組後も実親子関係が存続する「普通養子縁組」と
- 縁組により実親子関係が終了する「特別養子縁組」の2つの制度があります。
通常、相続税対策にて養子と呼ばれているものは、前者の普通養子縁組制度のことを指しますので、以下、普通養子縁組にて解説させて頂きます。
■養子縁組のメリット
1.相続税の節税になる
養子縁組により法定相続人が増加し、以下の計算により基礎控除額が増加して節税になります。
「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
2.生命保険金の非課税金額の増加
養子縁組により法定相続人が増加し、以下の計算により非課税金額が増加して節税になります。
「500万円×法定相続人の数」
3.死亡保険金の非課税金額の増加
養子縁組により法定相続人が増加し、以下の計算により非課税金額が増加して節税になります。
「500万円×法定相続人の数」
4.相続税の総額の計算
養子縁組により、相続人が増えることで、遺産に対する相続税の税率の低下と控除額の増加が見込まれる場合があり、節税に繋がる場合がございます。
しかし、上記の計算は養子の数に制限が設けられております。
- 被相続人に実子がいる場合は養子は1人まで
- 被相続人に実子がいない場合は養子は2人まで
※無制限に養子縁組を認めてしまうと、意図的に相続税を抑えることが可能となってしまうことを防ぐためです。
5.孫養子にした場合は、一代飛ばしが可能
・孫を養子にすれば、親の遺産を子供を飛ばして、孫に相続させることが可能です。
通常であれば、親の遺産は子供が相続し、相続税を負担をして、将来、子供の相続の際に、孫が相続し、孫が相続税を負担するということになります。通常は2回相続税負担が生じます。
しかし、孫を養子にすることで、子供に遺産を相続させることなく、相続税負担を1回で済ませることが可能です。
・但し、孫養子の場合は相続税が子供に比べて20%増し(2割加算)となりますので、事前のシミュレーションが必要です。
・一代飛ばしの利点は、相続税だけでなく、不動産の場合は相続による移転登記費用等も1回で済ませることが可能という点も大きいメリットとなります。
■養子縁組のデメリットと注意点
養子縁組による、デメリットや注意点も確認しておきましょう!
1.養子縁組により他の相続人の相続分が減少する
養子縁組により相続人と同じ権利、相続分が発生します。当然、他の相続人の相続分に影響が及びます。このことに不満を抱く方もおられるでしょうし、そのことによりトラブルになるケースも散見されます。
養子縁組を検討される場合は、節税だけではなく、他の相続人の関係性も考慮して行う必要があります。
2.相続人が増えることにより分割で揉める可能性が増加
先程、養子縁組により相続税の節税になると言いましたが、逆に負担が増えるケースもあります。
例えば、子がいない夫婦の夫が亡くなり、相続人が妻(相続分3/4)と夫の兄(相続分1/4)の2人の場合
夫の遺産が4億円の場合
- 養子がいない場合
妻は相続分3/4の3億円を相続し、配偶者の税額軽減により相続税負担は0円となる。
- 養子がいる場合
相続人は妻と養子となり、妻の配偶者の税額軽減の上限が1/2の2億円となり当初の3/4の3億円を相続した場合には超過した1億円について税負担が生じてしまいます。
このようにケースによっては、逆に税負担が増える場合もあり、個別に判断や検討が必要となります。
3.税務署に否認されるリスク
過度な節税を意識したような養子縁組対策は、税務署に否認されることがありますので、注意が必要です。
4.連れ子は養子縁組しないと親子関係になりません
再婚した妻に連れ子がいた場合、再婚しただけでは、夫と連れ子に親子関係はなく、相続権は生じません。この場合は、夫と連れ子が養子縁組することにより親子関係が生じ、相続権が発生します。また、相続税の計算上、養子の数に制限がありますが、連れ子養子の場合はこの制限はありません。
■おわりに
養子縁組の相続税の節税の効果と注意点について解説致しました。節税の効果はあり、メリットも大きいと思いますが、注意することもあり、やはり、個別に検討・判断していくことが必要と思います。節税は出来たけど、家族でトラブルになった・・・、そんな悲しいことにならないように、まず専門家にご相談されることをお勧め致します。