[概要編]よくわかる贈与税(その1)
贈与税をご存知ですか?贈与という言葉自体は、一般的にもよく知られた言葉ですが、贈与税を支払ったことがある方は、それほど多くないのではないでしょうか?それは、贈与であっても、贈与税がかからない場合や、特例が設けられているためです。そこで、今回は、この贈与税について、税金や法律の知識が全くない方でもご理解いただき、贈与を受ける場合に、その税負担が少しでも軽くなるよう、わかりやすく解説したいと思います。
1.贈与税ってナニ?
誤解を恐れずに、簡単に言えば、人から、年間110万円を超える財産を、タダでもらった場合、もらった人が、払わなければならない税金が「贈与税」です。
2.タダでもらった財産にはすべて贈与税がかかるの?
次のような場合には、贈与税はかかりません。(非課税財産)
①扶養義務者相互間での生活費や教育費など
②通常の見舞金・香典・贈答など
③心身障害者共済制度に基づく給付金を受給する権利
④選挙運動に関して受ける寄附金で公職選挙法の規定に従って報告されたもの
⑤法人からの贈与によって取得した財産(ただし、所得税がかかります)
⑥一定の要件を満たす住宅取得等資金・教育資金・結婚子育て資金
3.金品をもらわなければ贈与税はかからないの?
一般的にイメージする贈与だけでなく、贈与とみなされる場合もあります。(みなし贈与)
①自分が掛金を負担しないのに、生命保険や損害保険の保険金を受け取った場合
②著しく低い価額で財産の譲渡を受けた場合
③対価を支払わないで、借金の免除をしてもらった場合
④対価を支払わないで、不動産や株券の名義を自分に変更してもらった場合
⑤返済能力もないのに、親などから催促なしで多額の借金をした場合
4.いくら贈与税がかかるの?
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産を合計し、その合計金額から、基礎控除額の110万円を差し引いた残額に、贈与税の税率を掛けて、計算します。
(1)直系尊属から18歳以上の者に対する贈与(特例税率)
(例)親から500万円をタダでもらった場合(「特例税率」を使用します。)
基礎控除後の課税価格 500万円 - 110万円 = 390万円
贈与税額の計算 390万円 × 15% - 10万円 = 48.5万円
(2)(1)以外の一般贈与(一般税率)
例えば、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などです。
夫からタダで500万円をもらった場合(「一般税率」を使用します。)
基礎控除後の課税価格 500万円 - 110万円 = 390万円
贈与税額の計算 390万円 × 20% - 25万円 = 53万円
5.親からの贈与は、「親が亡くなる(=相続時)まで税金を支払わなくてもいい」と聞いたけど?
届出書を税務署に出せば、可能です。
60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与については、子・孫が「相続時精算課税選択届出書」を出せば、基礎控除110万円を超える贈与について、贈与をする人ごとに累計2,500万円までは贈与税はかからず(2,500万円を超えると贈与税が20%かかりますが相続時に相続税と清算されます)、相続時に相続税の対象となります。
相続時に、贈与時の価額で他の相続財産と合算し、相続税の基礎控除(3,000万円+相続人1人600万円)内であれば、相続税もかかりません。また、基礎控除110万円については、通常(暦年課税)は相続前7年以内の贈与は、相続財産に加算(7年縛り)されますが、この届出書を出せば、相続時に加算されません。ただし、この届出書を出して、一度この制度を選択したら取り消すことはできません。