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コラム2021年5月 後継者・幹部に必要な思考 「論点思考」①

お世話になっております。
今回は真面目な話をします(笑)

お客様から幹部向け研修をご依頼いただくことがあります。その際、よく「経営幹部が身に着けるべき思考法について」というテーマでお話しするのですが、これは後継者においても同じことが言えると思いますのでご紹介します。
今からお伝えするのは、創業社長にとっては当たり前で、一生懸命会社を作ってきた過程で自然と実践なさってきた考え方です。一方、後継者にはその経験がない状態で、「出来上がった組織」を継がなければならないので、意図的に身に着けることが望ましいと思います。

以下の図に、後継者・幹部が身に着けるべき思考法をまとめました。この中でも、
①論点思考(イシュードリブン)
②肯定的思考(ポジティブシンキング)
③批判的思考(クリティカルシンキング)

は姿勢の問題なので、すぐに取り組むことができます。

今回は、①論点思考 について解説したいと思います。

1.論点思考とは?

論点思考とは、「数多ある問題の中から“解くべき課題”を特定し、それにフォーカスして考える思考」のことです。後継者が経営者の立場に就いたとき、日々膨大な数の問題に直面し、意思決定を迫られます。
その全てを解決しようとしたり、一つ一つに“悩んで”しまうと、到底時間が足りず、重要な意思決定ができません。また、解くべきでない課題を解こうとしてしまうと、間違った意思決定をしてしまうことにつながります。

正しい論点設定をするためには、以下がポイントです。
ポイント①:「経営上重要」で、「解決可能」な問題のみにフォーカスする
ポイント②:「そもそも何が目的なんだっけ?」を問い直す

以下、例え話を交えながら説明していきます。

2.ポイント①:経営上重要で、解決可能な問題のみに時間を使う

例えば、従業員から「業務で使うシステムが不便だから別のシステムを購入してほしい」という意見があったとします。これが、自社にとって、「経営上重要」で、「解決可能」な問題であれば、経営者は解決のために時間を使うべきです。経営上重要でなかったり、解決不可能な問題である場合には、そこに時間を使うべきではありません。

<経営上の重要度と解決可能性によるマトリクス>

(1)「経営上重要度が高い」とは?
経営上の重要度は、利益に影響があるかどうかの一点で判断するべきと考えます。短期的な話だけではなく、長期的に数字に影響を及ぼす場合も「経営上重要」です。「職場の雰囲気」というのも、それによって業務品質・効率が変わったり、退職が出たりして売上が減ったりするものであれば重要ですし、数字に影響がないものであれば、「経営上重要」とは言えません(ヒトとして気持ちが良いかは別として)。

上記のシステムの例では、
・システムを変えないと、業務効率悪化により売上が減少し、結果利益が減少するような場合
・不満に思った従業員が退職してしまい、補充も効かず、売上が減少し、結果利益が減少するような場合
は、経営上重要度が高い問題と言えます。

一方で、
・業務効率は悪化しても売上は減少しない(現状は需要に対して自社の供給力が余裕があり、需要がこれ以上増えない)ような場合
・不満に思っても退職にはつながらない or 退職しても補充可能であり、売上は減少しないような場合
は、経営上重要度が低い問題と言えます。

ベテラン経営者にとっては当たり前のことですが、経験の浅い後継者の場合、従業員から「今のシステムでは業務効率が悪いです。新システムにして業務効率をアップさせるべきです!」と言われたら、「業務効率が悪いのは問題だ」と考えて投資を実行してしまう可能性は結構高いと思います。「業務効率は高くなければならない」という思い込みがあるからです。

現状の会社が、「発注は沢山来るが“システムの効率が悪いために”断っている」状態なのであれば、システム更新によって売上はアップします。しかし、発注が今以上に増えない場合には、システム投資して効率が良くなったとしても、売上も増える訳でもコストが減る訳でもなく、「なんだかちょっと楽になっただけ」という結果になってしまいます。

(2)「答えが出せる」とは?
これは言葉通りですが、
・別のシステムが購入可能である場合
・システムを変えたら良くなる(別の不満が出ない)場合
は、答えは出せる問題であるということになります。

逆に、
・システム変更ができない場合
・システムを代えても別の不満が出る場合
は、答えが出せない問題であるということです。

例えば、システムを変更する場合には多額の違約金と多額の再投資が必要になる場合には、実質的には「システム変更はできない」と考えられます。この場合でも、後継者は「みんなが使いにくいと不満を言っている。ハァ、どうしよう・・・」と悩んでしまったりすることがあります。気持ちは分かりますが、悩んでも解決できない問題には、「もうしょうがない」と割り切ってできるだけ時間を使わない方が良いと思います。
※心情の問題として、従業員の方の苦労・感情に共感するのは非常に重要だと思います。経営者の判断の時間を使うべきではないということです。

後継者・幹部に必要な思考「論点思考」

ここまでお読みくださいましてありがとうございました。
次回は、今回の続きとして、
ポイント②:「そもそも何が目的なんだっけ?」を問い直す
からご説明したいと思います。