コラム2022年3月「○○屋」に囚われない顧客・競合視点とは!?
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今回のテーマは?
お世話になっております。今回は、「○○屋」に囚われない顧客・競合視点についてお話したいと思います!
1.培ってきたものを活かそうとするあまり固執してしまうことがある
中小企業の事業において、自分が売りたいものや自分が持っているものを売ろうとする、もしくは自分がこれまで培ってきたものを活かそうとするケースがあると思いますが、「逆に活かそうとするあまりそれに囚われてしまっているケースがよくあるのではないか」と思うことがあります。
例えば会計士や税理士でありがちなのは、「会計の素晴らしさを広めたい!」といったことにこだわってしまうケースがあります。お客様の決算書を色んな指標で分析して、何とか比率、何とか回転期間、何とか分析をすると・・・という風にそのことに時間を割き、固執してしまうケースがよくありがちです。会計というのは、『企業の事業活動を色んな角度から見る』ということに過ぎないので、指標での分析も必要ですが、あまりにやりすぎてもそれ以上意味がありません。シンプルに私が重要だと思うのは現預金残高なので、現預金残高をいかに増やしていくかということが一番大切だと思います。
過去の分析というのはもちろん必要ですし、部門別や商品別に見たり、推移を見たりというのは必要ですが、それよりも『これから何をやるのか』『現状のままだとどういう数字になるのか』『それに対して不足はどれだけあるのか』『それを埋めるために何をやっていくのか』ということを明確にして、それぞれの施策を実行していくことで、「期待する効果がどれぐらいなのか」ということをきちんと数字に落としていく。それをシンプルに見えるようにすることが非常に重要だと思います。
2.果たしてそれは、お客様の悩みの根本的な解決に至っているのか・・・?
また、○○比率のような指標に固執しすぎると、本当に必要なことが見えていないのではないかと思います。例えば、自己資本比率は企業の発展段階によって変わるので、何かに投資をしようとしている段階なのか、成長段階なのかもしくは成熟してきているのか、落ちてきているのか、それをもう一度盛り返そうとしている段階なのかによって、結局自己資本比率や人件費率というのは変わってきますし、会社の戦略によっても変わってきます。
「業界平均の人件費率はこれぐらいです」と言っても、会社の戦略によっては人件費を非常に多くかけてその分、他社ではできないぐらいのサービス品質を担保することによってお客様を呼び寄せているという戦略でいけば、人件費率は高いはずですし、それで成り立っていれば高くていいはずです。
人件費率も会社の成長段階や戦略によって全然変わってくるので、それを良い悪いと言っても意味がないと思います。一番大事なのは現預金残高が増えていることなので、そこをシンプルに見ていく必要があります。会計事務所では、会計の知識を駆使して色々やろうとしてしまう傾向にありますが、それは、お客様から見れば「で、何なの?」という風に陥ってしまいがちで、お客様の悩みの根本的な解決には至っていないと思うのです。
3.見落としがちな顧客視点と競合視点
他にも「地元産の○○を使った商品を作って売り出す!」というケースはよくあります。作っている方は「これが売りになるのではないか」と思って作りますが『お客様がなぜそれを選ぶのか』という視点が欠けてしまうことがよくあります。あるいは、競合の視点で言えば、『他社でも同じものが作れるのではないか』という視点も必要だと思います。
売り出そうとしている地元産○○を使った商品が競合が作っていないものだったり、作れないものであったり、それがかつ魅力的なものであれば、お客様も買いに来ると思いますが、他の競合が他の都道府県で同じようなものを作っていた場合、いいものでなければ、そちらを買いに行くわけで、前者を選ぶ理由がないですよね。あるい『地元産○○』の『○○』がものすごく素晴らしいものであれば良いですよね!他の都道府県で同じイチゴを作っているけれど、こちらのイチゴの方が糖度も高く、他の都道府県で作れないものであれば、お客様に選ばれると思います。
お客様がこれを選ぶ理由がある・競合が作れない・追いつけない理由がある上でそれを作るのはよいですが、「自分たちがたまたまこういうものを作っていたから売りにしよう」というプッシュの視点というのは、なかなかうまくかみ合うことは稀だなと思います。
他にも、「○○エリアの活性化」というのも、そのエリアに囚われてしまっていることが、まあまああります。○○エリアの活性化が必要だということは、エリアの集客が落ちてきているということですが、何で落ちてきているのかというと、例えば社会構造の変化という大きな環境変化が原因で電車移動から車移動になってしまい、人が来なくなったということが考えられます。そのエリアに人を呼び戻そうというのは、(可能性はゼロではないですが)なかなか難しいことと思われます。どちらかというと「環境に合わせて自分たちが変わっていく」ことの方が成功確率が高いのではないかと思います。
エリアに囚われてしまうと、自分たちが場所を変えることや、事業内容を変えることなど、そういった発想が生まれにくいと思うのです。「絶対上手くいかない」というわけではないですが、会計の知識や地元産の○○、○○エリア等に囚われると、他の選択肢がなかなか浮かんでこなかったり、お客様が求めているものじゃなかったり、もしくは競合がそれより良いものを作れてしまう・・・よって上手くいかないというケースが見受けられます。
4.“自分たちは何ができるのか”ではなく、“お客様の悩みは何か”を前提に考える
では、「どうすればいいのか?」ということですが「何か新しく始めよう」「変えていこう」としたときに、まずお客様が「どんな悩みを持っているのか」「どうしたらもっと幸せなのか」を考えることが大切だと思います。
例えば会計事務所であれば、「会計を説明する」というのは目的ではなく、手段のひとつです。目的は「お客様を幸せにすること」だと思うので、お客様や経営者さんの事業が上手くいき、幸せになること、その企業に勤める従業員が幸せになること、それが会計事務所の目的であって、会計を売ることが目的ではありません。
お客様の悩みを理解するためには、日々、現場に出ることが大切だと思います。自社の商品やサービス以外にも、お客様が困っていることや悩みを聞く機会が沢山あると思います。自分たちは何ができるのかは置いておいて、まずはお客様の悩みを前提に考えることが大切だと思います。
例えば、会計事務所であれば、経営者のお客様が多いので「事業承継」という大きな問題に誰もが直面します。「後継者を優秀な子に育てたい!」という悩みがあるとすれば、経営者の卵を育てるための幼児教育サービスを提供してもいいと思います。(某幼児教育の先生が「天才をつくるのは幼児教育だ!」と言っていたような言っていなかったような・・・)
会計事務所が幼児教育を行い、幼い頃から経営者の子供はその教室に通い、英才教育を受けるということをやってもいいわけです。それは、「我々は会計事務所であるということに固執していると、その発想は出てこないと思います。しかし、お客様の悩みを聞いていると、「子供に経営を任せられるか不安」という悩みや「あの会社は優秀な子がいていいな」など、そういった話が出てくることが多々あります。その悩みの一解決策として、「幼いころから英才教育をするのはどうだろうか」というアイデアが出てきます。事業承継に関わらず、お客様の悩みは無数にあり、それに対する解決策も無数にあると思います。
そういった解決策を考える中で「競合が真似できないのか」ということは考えなければいけません。顧客視点で考えた上で、「他は真似できないか」「他に勝てるのか」と「自分たちの強みは何か」を把握しておくことは大切ですが、ただ、スタート地点として自分たちが持っているものを売ろうとするのではなく、お客様が悩んでいることに自分たちが持っているものが合えばそれを提案する、なければそれを身につけていくというような視点が必要なのではないかと思います。
事業承継において後継者の方とお話している場面でも、父親の時代から自分の時代になって、「事業環境も変わっているので、内容も変えないといけない」という中で「うちは○○屋だから」という考えに固執していることが多いように思います。そこは、「○○屋」ということに囚われず、一度、自分たちのお客様をよく見て「どうしたらお客様が幸せになれるのか」という視点で考えてみることが大切だと思います。