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コラム2021年6月 後継者・幹部に必要な思考 「論点思考」②

お世話になっております。
今回は前回の続きで、「論点思考」を実践するためのポイントについてご説明したいと思います。

ポイント①:「経営上重要」で、「解決可能」な問題のみにフォーカスする
ポイント②:「そもそも何が目的なんだっけ?」を問い直す

前回は上記の①については先月号でお話しましたので、今回は②についてお話します。

1.ポイント②:そもそも何が目的なんだっけ?を問い直す

(1)正しい論点設定をするには真の目的を問い直す

2020年3月に新型コロナウイルスの流行が始まってすぐの頃、「在宅勤務を推進しなければならない」ということが急速に言われ始めました。一方で、「IT化が進んでいない中小企業では在宅勤務は難しい」「中小企業のIT化を進めるべきだ」という議論も巻き起こりました。この議論は、「在宅勤務をいかに進めるか」を論点に設定しており、結果として「うちは在宅勤務はできない」という結論を出していた中小企業も多かったように思います。(もちろん、飲食業のようにそもそも在宅勤務が選択肢としてありえない会社もあります。)

しかしながら、「そもそも何が目的なんだっけ?」を問い直すと、
目的は、「新型コロナウイルス感染リスクを下げながら、業務を継続すること」であり、
「在宅勤務をすること」が目的ではない(手段の一つである)はずです。

そう考えると、そもそも在宅勤務をできるかできないかはあまり問題ではなく、(在宅勤務できる場合は取り入れながら)感染リスクを下げつつ業務継続する方法を考えればよいことになります。

当社の場合は、「完全に出社ゼロは難しいが、在宅で作業や会議はできる」という業務形態でしたので、以下のように、できる範囲での在宅勤務と、その他の感染対策を合わせることで感染対策しつつ業務継続をしました。

  • 会計税務部門・労務部門は、交代で在宅勤務とし、出社人数を3割くらいに減らす
  • 総務部・決算チェック担当は出社とする
  • 出社人数が減り、会議室も執務エリアとして使うことで、座席間隔を最大限空けて座る
  • 窓を空け換気を徹底する
  • (完全にペーパーレスにはなっていなかったため)必要な紙資料は、配布した資料保管専用ケースに入れて持ち帰り、在宅勤務時も専用ケース内に保管することを徹底する
  • 移動は全員車のため、公共交通機関利用により密になることもない

上記のようなことは、時間が経つにつれ事例も拡散されていったため、今となって当たり前かもしれません。
ですが、当時「在宅勤務できるか」を論点と認識してしまっていた企業の場合、「まずはペーパーレス化をしなければ・・・」となって非常に時間がかかってしまったり、「来客があったらどうするのか」といった“できない理由”に阻まれて何も進まなくなってしまったかもしれません。

新型コロナウイルス対策のテーマは、全国的な問題で、多くの情報がすぐに行きわたるものだったので、論点設定が間違っていたとしても、すぐ修正が効いたかもしれません。
ですが、その他の膨大な経営判断において、後継者や幹部が論点設定を誤ってしまうと、非常に遠回りになって時間がかかってしまったり、何も進まなくなったりしてしまうことがご想像いただけるかと思います。

後継者や幹部は、もちろん(致命的でない)失敗も積み重ねながら経営力を磨いていくことも重要ですが、論点思考のような「勉強すれば身に着けられる技術」は学んで損はないと思います。

(2)お勧め書籍のご紹介

読みやすくお勧めの書籍がありますのでご紹介いたします。
後継者様へのプレゼントに、社員様への課題図書に、どうぞお使いください(笑)
・安宅和人(2010) 『イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」』 英治出版
・内田和成(2010) 『論点思考』 東洋経済新報社

ここまでお読みくださいましてありがとうございました。
次回は、今回の続きとして、② 肯定的思考(ポジティブシンキング)からご説明したいと思います。