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コラム2022年6月 体験談!後継者のビジョンはどのように作られるのか

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今回のテーマは?

今回は「体験談!後継者のビジョンはどのように作られるのか」というテーマでお話したいと思います!

 「後継者である社長の息子には方針がない、意思がない」というお話をお客様の会社に勤めている従業員さんや社長さん自身から聞くことがあります。それに対して私は、「ある程度の裁量、立場、権限が揃う環境が無いうちからはっきりとした方針を求めるのはムリではないか」と思うわけです。
 方針というのは誰もが初めから持っているものではありません。後継者が自分なりに仮説をもってチャレンジを重ね、大小様々な気づきを得て固めていくものです。チャレンジが不十分なうちから「方針をもっていないからダメだ」と決めてしまうのは難しいのではないでしょうか。

1.先代の受け売りでも与えられた”裁量”と”権限”

 私は2019年1月に入社し、5月に代表社員になりました。新卒では、業務内容は異なりますが一応会計事務所に入り、現場経験もありました。ただ自分の意思や語れるものはまだ無く、当時を思い返してみても完全に先代の受け売りでした。父親が懇意にしているコンサルタントの方から「君はどんな会社を創っていきたいのか?」と聞かれた時も、うろたえながら先代の受け売りで「代行とか…」と答えていました(笑)

 そんな私が、どのようにして先ほどのツイートの考えに至ったのかということですが、先代の受け売りから始まったものの、裁量と権限は与えられたわけです。もちろん何でも好き放題にしてしまうと危険なので、先代と相談しながらです。それでも、余程外れたことでなければ自由にさせてもらいました。その中で取り組んだことのひとつが、当社公式LINEでの情報発信です。公式LINEでは助成金、補助金、融資制度などの情報を無料で配信していますが、そもそも始めたきっかけは私の思いつきです。裁量を与えられたからには「多くの方が求めていそうなこと」や「あったら良いなと思うもの」を始めたいという思いがありました。今では登録してくださった方々から口コミが広まり、当初の想像を超えて1600人以上の方に登録していただいています。
 
 そしてもう1つは、趣味としてこのニュースレターにコラム掲載を始めました。会計事務所のニュースレターと聞くと「○○税制について」などと少し堅いイメージがありますが、「可愛い子にはゴルフをさせよ」といったタイトルで、ちょっとふざけた内容でした(笑) もちろん税金に関する話も大事だとは思います。ただ、私のコラムでは、ほとんど「経営に関すること」や「後継者としての気づき」をテーマにしてきました。
 
 すると思いのほか反響を頂いて、「こういうネタは評判が良いのだな」「これはウケが悪かったな」と、数々の小さな成功事例と失敗事例を重ねることができました。そこで「こういうことでお客さんも悩んでいるのかな」「こういうサービスを欲しているのかな」と、いろいろな気づきを得たわけです。さらに、その気づきを基に新しいチャレンジ、検証を積み重ねていきました。ただ、失敗するか成功するかはチャレンジしてみないと分かりません。そして、チャレンジをするためには、ある程度の裁量や権限が必要だと思うのです。

2.新しいことへのチャレンジには“立場”も必要

 後継者がチャレンジを重ねて気づきを得ていくためには、裁量と権限の他にもう1つ必要なものがあります。それが立場です。「自分が全部決めていくのだ」という立場になってこそ、「次はこれをやってみよう」という思考に繋がると思うのです。トップの指示を受ける立場や、承認を得なくてはいけない立場のままでは、新しいチャレンジが億劫に感じてしまうこともあります。そういう意味で裁量、権限に加えて立場というものが必要だと思います。

 私にも経験があって、大きなことでも小さなことでも積極的にチャレンジをするようになったのは「自分が全部決めていくのだ」という立場を自覚してからでした。チャレンジをしていく中で、大きな成功・大きな失敗、小さな成功・小さな失敗を経て、「こういうことが求められているのだな」「こうすれば上手くいくのだな」という気づきを得ると共に、自分の中のいろいろな仮説を検証することができました。そしてそれが「うちの存在意義はこういうところだな」「税金も大事だけどそれに囚われ過ぎず、事業者の幸福を考えてできることが沢山あるな」という方針に繋がっていったのです。

3.チャレンジする後継者を後押しする”理論”

 また、チャレンジできる環境にプラスして必要だと思うものは、「気づきを裏付けする理論」です。いわゆる「お勉強」はしたほうが良いと思います。私は前職で「事業経済性」という考え方について教わりました。
 1つひとつの詳しい説明はしませんが、要は事業経済性という、いろいろなビジネスの儲けの構造や勝ちパターンについての考え方で『規模の経済・密度の経済・範囲の経済・ネットワーク外部性・スイッチングコスト』といった考え方があります。例えば、会計事務所であれば「密度の経済」と「範囲の経済」がとてもよく効くと思っています。それに加えて、スイッチングコストを高めたり、顧問先同士でネットワーク外部性を発揮したりできるとさらに良いと思います。
 
 これは一例ですが、そういった視点を持ってチャレンジしながら、時には大きな、時には小さな成功と失敗を繰り返しているのです。そういった経験を積み重ねることで、「これはネットワーク外部性を発揮するのに役立ちそうだな」とか「スイッチングコストを高めることに繋がるな」とピンとくるようになりました。このように、「座学で身につける理論」がチャレンジする後継者の気づきを後押しし、方針が固まっていくのだと思います。

4.環境づくりが出来たら任せつつ見守る

 繰り返しになりますが裁量と権限、そして「自分がトップとして決断する」という立場、この3つが揃っていないのに、「あの後継者は意思がなくて頼りない」と言っても、それは無理だと思います。もちろん大前提として、後継者さんが「事業を継ぎたい」という気持ちがあるのか、組織のトップに向いているのか、という問題もあるでしょう。しかしその上で、継ぎたい意思は持っていても、裁量・権限・立場がない状態であれば方針や意思は生まれないと思います。大切なのは、そういった意思を持ち、方針を固めることができるような環境を整えることだと思います。そしてそれにプラスして、後継者の気づきの裏付けとなる理論が必要だと思います。理論については、アクシスグループが後継者向けセミナーを開催しますので、是非受けて頂ければと思います(笑)

 そういった環境を用意した上で、先月のニュースレターにも掲載した「任せつつ見守る仕組み」が大切になってきます。“任せているけど見守っている”という状態で裁量・権限・立場、そして理論を学ぶことができる環境を用意してあげる。そうすれば後継者はチャレンジを重ねて仮説検証しながら、方針や意思を固めていってくれると思います。