• コラム
  • お知らせ

コラム2022年8月 大学発ベンチャー!地方における”特別な意義”とは?

axis talk コラム動画版はじめました!
是非youtubeをご覧ください。


今回のテーマは?

最近注目されている言葉でもあり、地元徳島大学でも力を入れている「大学発ベンチャー」。皆さんも耳にする機会が増えているのではないでしょうか?今回は「大学発ベンチャー」がもたらす、地方における”特別な意義“についてお話したいと思います。

1.地方の大学から生まれる”グローバルニッチトップ”

 今年の5月、Twitterに「大学発ベンチャー」について投稿しました。投稿内容にある“経済合理性からすると”というのは、大きな目線で言うと「能力があり野心のある人ほど都会に行ってしまうことが多い」ということを示しています。都会に行った方が稼げたり、最先端のビジネスを学べたり、大きなことを成し遂げることができたり、といったことが理由として挙げられます。それに比べて地方では、人材の流入より流出が多く、事業を生み出すといったイノベーションや、時代の最先端を行くようなビジネスが生まれにくいということがあると思います。

 ただ、それを無視した存在があります。それが大学の研究を元にビジネスを行う「大学発ベンチャー」です。”大学”というのは学問の世界であり、「徳島大学でしかしていない研究」や「徳島大学の研究が世界で最先端」といったものが存在します。

 ビジネスにおいても、「グローバルニッチトップ」といった大多数のシェアを獲得しているニッチな事業分野もありますが、普通のビジネスでは非常に稀なことです。それに比べて、大学の研究というのは、学ぶ分野が狭く、特化してその分野を深く掘り下げていくので、「徳島大学で行っている研究は、他に誰もやっていない」ということが起こり得るのです。

 すると、その研究が面白いと思う人たちが大学に集まり、研究を元にしたビジネスが生まれ地方の大学から「大学発ベンチャー」が生まれる可能性があります。通常の経済合理性から考えると世界初の商品や製品というのは、都会から生まれることが多いですが、世界における最先端の商品やサービスが地方から生まれることもあるのです。

2.徳島大学の研究から始まった“株式会社GRYLLUS(グリラス)”

 Twitterの投稿でもご紹介した「食用コオロギ」が今非常に注目を集めています。低糖質・高タンパクで、かつ大量生産が可能という昆虫食です。肉や野菜が将来足りなくなるかもしれない、将来昆虫食が人類を救うかもしれないと言われていますが、それにコオロギが適しているのではないかという話があります。(昆虫食に関しては素人なので、詳しいことはよくわからないのですが(笑))

 徳島大学の学長であった野地澄晴さんは、元々コオロギの研究をしていた方で色々な書籍も執筆しています。例えば、コオロギのゲノム編集をして、味や栄養価、大量生産に適した品種にするといった、より食用に適したコオロギの生産を可能にしました。コオロギにも「こういう品種はちょっと美味しくないだろう」「こういう品種は美味しい」といった味の違いがあるようです。また、大量に生産できた方が人類の課題解決にも繋がるため、できるだけ人の手を入れず、自動化する飼育ノウハウも先駆けて行われています。

 そういったコオロギの研究は、徳島大学がかなり先駆けて行っていたようで、今でもその研究者たちが徳島大学に集まってきています。そこから始まったのが株式会社GRYLLUS(グリラス)という会社です。コオロギの可能性を社会に実装していくことを目的として創業したフードテックベンチャーで、徳島大学発のベンチャーです。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、株式会社良品計画(無印良品)とコラボ開発をした「コオロギせんべい」も発売されています。私も食べてみましたが、えびせんみたいな味でちょっと香ばしく、美味しかったです!

3.新たなビジネスチャンスを生み出す“大学発ベンチャーの強み”

 株式会社GRYLLUS(グリラス)さんは、本社も生産工場も徳島にあり、パートさんを雇用して製造を行っています。私も工場を見学させて頂いたことがありますが、コオロギを箱から箱へ移す作業では、移したコオロギがぴょんぴょん飛んでいったり(笑)飛んでいったコオロギを拾う作業があるなど、色々な仕事がそこで生まれています。生産工程を自動化するために地元のメーカーと提携して自動化の機械を導入するといったことも行われています。今後、地元の他の食品メーカーとコラボする可能性もあります。
 そうして、自分たちが雇用を生み出すこともあれば、その他の地域の会社と連携することによって新たなビジネスチャンスを生み出すといったイノベーションを起こすこともあるのです。

4.都会とは異なる“地方にとっての意義”

 普通であれば、なかなかそういったことは地方では起きません。野心があったり、能力があったりする人、「一旗あげてやろう」といった人は、都会に行きがちだからです。しかし、「大学発ベンチャー」はそれとは少し違う論理で人が集まっています。「あの先生の下で学びたい」という思いから地方の大学に優秀な研究者が集まり、そこから新たなビジネスが生まれることがあります。Twitterでも書いたように、地方における大学初ベンチャーというのは都会の大学発ベンチャーとはまた少し違う「地方にとっての意義」があると思っています。都市と地方ではいろいろな格差がありますが、それに逆らって人材が集まり、ビジネスチャンスが生まれ、地方にイノベーションをもたらすという意義があるのではないかと思い、今回ご紹介させて頂きました。